No.148【使徒信条とグノーシス主義】

◆「グノーシス主義」と呼ばれるキリスト教の異端があります。その特徴は“霊肉二元論”です。「霊(=霊的存在)は真の神から生まれ、肉(=物質的存在)は偽りの神から生まれた」という思想です。「だから、この肉体という牢獄を抜け出して、霊的世界に帰らなければならない。この物質世界が偽物であることに気づけ。この知識(グノーシス)を悟る者だけが救われるのだ。」

◆それゆえ彼らは、「天地の造り主」を否定します。旧約聖書の神は偽りの神であり、新約聖書の神が真の神だと考えるからです。また彼らは、イエス・キリストが「苦しみを受け」たことも信じません。「イエス」という肉体は苦しんだけれども、「キリスト」という霊体は苦しまずに離脱したと考えるからです。もちろん、「からだのよみがえり」も信じません。「せっかく霊的世界に帰ったのに、なぜ牢獄に戻らなければならないのか」というわけです。

◆2世紀頃に始まったグノーシス運動は、4世紀頃には消滅しました。しかし、形を変えて今も生き残っているとも言えます。私たちが使徒信条を告白するのは、この異端に対抗するためでもあるのです。孫子の言葉を借りれば、「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」です。