No.110【弁証論③:なぜ神は聖絶を命じたのか?】

◆聖書に関する疑問の中で、僕自身も悩まされてきたのは、「なぜ神は聖絶(せいぜつ)を命じたのか?」という問題です。たとえば、「……次の民の町々では、息のある者を一人も生かしておいてはならない。すなわち、ヒッタイト人、アモリ人、カナン人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人は、あなたの神、主が命じられたとおり必ず聖絶しなければならない。 」(申命記20:16-17)

◆「皆殺しを命じる神など信じられない」と思います。ただし、神が聖絶を命じた目的は、“子どもを犠牲としてバアル神に献げる”などの悪習を根絶することでした(詩篇106:34-38)。実際、バアル礼拝が行われた地域からは、乳幼児の遺骨が大量に発掘されます。聖絶命令は、幼児虐殺を繰り返す彼らを数百年も忍耐した上での、苦渋の決断でした(創世記15:13-16)。

◆逆に言えば、彼らがこの悪しき習慣を捨て去れば、聖絶される必要もなくなるはずです。遊女ラハブはカナン人でしたが、カナン社会との縁を切ったことによって、家族と一緒に生かされ(ヨシュア2章,6章)、イエス様の先祖の一人とさえなりました(マタイ1:5)。裁きは時に厳しすぎるように見えます。しかし、神が滅ぼそうと願うのは、人ではなく罪なのです。