No.81【「国籍は天にあります」?】

◆「私たちの国籍は天にあります」(ピリピ3章20節)と聞くと、“死後は天でのんびりしよう”みたいなイメージを持つかもしれません。しかし、この言葉が送られたピリピという町は、“ローマに国籍を持つ人々がローマ文化を持ち込んでローマ化した町”でした。つまりパウロが言いたかったのは、“私たちの国籍は天にあるから、死後は天でのんびりしよう”ではなく、“私たちの国籍は天にあるから、堕落したこの地に天の文化を持ち込んで天国化しよう”です。

◆「天の故郷」(ヘブル11章16節)とか、「天上のエルサレム」(12章22節)などの言葉からも、“死後は天に帰って永遠に暮らす”という印象を受けるかもしれません。しかし大切なのは、「神には人を死者の中からよみがえらせることもできる」(11章19節)という“復活信仰”であり、「新しいエルサレムが……天から降って来る」(黙示録22章2節)という“天と地の結婚”です。もちろん、死後は一旦「天の故郷」で休みますが、やがて復活し、新天新地の生活が始まります。

◆“死後は天で永遠に”という考えは、“物質世界は悪、精神世界は善”というギリシャ哲学の思想です。むしろ聖書は、“物質世界は悪”ではなく、“物質世界を堕落させる力が悪”と語ります。神は地を滅ぼしません。その逆で、「地を滅ぼす者たちが滅ぼされる」(黙示録11:18)のです。