No.109【弁証論②:奇跡は起こったのか?】
◆“病気の癒やし”や“悪霊追放”など、聖書に書かれた“奇跡”は本当に起こったのでしょうか? 哲学者のヒュームは、① 「奇跡が起こった」 という誰かの証言と、② 「自然法則を超える奇跡など起こらない」 という私たちの経験を比べた場合、②のほうが信頼に値する、と言います。さらに彼は、「特に宗教者による証言は、作り話や勘違いの可能性が高い」とも論じました。
◆ただし、信頼すべき証言もあります。たとえばマタイ12章24節には、〈パリサイ人たちは言った。「この人(イエス)が悪霊どもを追い出しているのは……ベルゼブルによることだ」〉とありますが、イエス様を悪魔呼ばわりする話を、信者が創作したとは考えにくいでしょう。つまり、パリサイ人の“悪口”は事実であり、有力な“証言”である可能性が非常に高いのです。
◆また、 「自然法則を超える奇跡など起こらない」 という私たちの経験にこだわると、「宇宙はどこから生まれたのか?」 という問題が残ってしまいます。先週のコラムにも書いたように、宇宙の始まりについて突き詰めて考えるなら、“自然法則を超えた何か”に辿り着くからです。そして、宇宙を造った神が存在するなら、「自然法則を超える奇跡」などは朝飯前なのです。